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ホーム > マルチコプターとは

何故マルチコプターがここまで注目されるのか?

 

   人が搭乗しない無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle)は、米国の軍事用固定翼機の開発で発展してきた。日本での産業利用としては、農薬散布用の無線操縦ヘリコプターが有名。近年では、電動のパワーソースが大きく進化したことと、MEMSなどのデバイス進化による自動制御技術の急速な発展から、複雑な機械的制御機構を持たないマルチローターが登場したことで、様々な産業用途での爆発的な普及が予測されている。

 

固定翼 回転翼(シングルローター) 回転翼(マルチローター)
固定翼無人航空機 回転翼無人航空機 マルチコプター
いわゆる飛行機タイプのもの。高速で長距離を飛行させるのに適している。航空写真の撮影や、無線基地局として活用されている 実機のヘリコプターでは最も普及しているタイプ。機械的な制御機構が複雑なため、組み立てや、メンテナンスには熟練を要する。操縦技術習得も時間がかかる。
複数の小径ローターを回転方向を上手く組み合わせることで、シングルロータータイプと同様の動きを実現したタイプ。コンピュータ制御のサポートを受けることで驚くほどの安定感を持ち、今後の産業用UAVの主流となりつつある。
空中停止ができない。
※離着陸にはある程度のスペースが必要
燃費が良いので長時間、
長距離フライトに適する。
空中停止や、低速移動が可能。
※離着陸にスペースを要さない。
燃費が悪いが、ガソリンエンジン
のため1時間以上の飛行が可能。
空中停止や、低速移動が可能。
※離着陸にスペースを要さない。
電動であるため、バッテリー性能などを考慮すると10分~30分程度の飛行が適する。
用途によっては、長時間、長距離運用の特性を活かして非常に強力。ランチャーやパラシュート回収等のシステムで離着陸距離を必要としない運用方法も開発されている。機体は回転翼に比べ、非常に大きくなる。 ・ローターが大きく、人や、物に対する攻撃性が高い。回転により発生する振動も大きいためセンサーや、カメラの防振対策が必要
・機構の複雑さからパーツ数が多く、トラブル要因も多くなる。ペイロードあたりの機体重量が大きくなる。
・騒音が非常に少ない。
機体の構造がシンプルで、コストを抑えることができる。
・コンピューターとの親和性が高く、自動制御が行いやすい。
・ペイロードあたりの機体重量が軽い。5Kgのペイロードで、バッテリー込みの機体重量は5Kg。

 

マルチコプターが解決できること

 

   人が搭乗しない無人航空機では、人間が冒すリスクをなくすことを可能にした。人間ではできなかった噴火中の火山探索や、コンビナート火災調査、放射線エリアでの計測作業等を行うことが可能となった。また、急速に進化、発展する自律制御のテクノロジーにより、ある程度の自動化が可能となり、産業用ロボットとして使用することが可能となった。

@少子高齢化による労働人口減少問題を解決

 団塊の世代の退職ラッシュによりベテラン層のリタイアが加速すること、また、長引いた不況の影響で、若い世代への技術の継承が不十分であることから、プラントやインフラ保守の業界等では、現状レベルの業務の継続困難という問題に直面している。マルチコプターが人間に代わり巡回、点検を行うことで問題のある箇所のみを絞込み、効率的な点検保守業務を可能にする。

A人間の作業リスク軽減

 災害救助活動等において、救助する側の人間にも大きなリスクが発生する。災害現場の正確な状況を一刻も早く把握し、救助する側のリスクを最小化するための的確なプランを立てる上で、マルチコプターによる支援は非常に強力であり、要救助者の延命にも大きな影響を与える。

B人間ではできなかった事を可能に

 プラント火災現場や、噴火している火山の火口、土砂崩れ現場、放射線汚染区域等、人間が近づくことが不可能であった場所でも、無人のマルチコプターであれば、壊れてしまうのを前提で接近させることが可能。また、遭難者発見のための広範囲、長時間に渡る夜間の捜索飛行など、人間では不可能であった活動も行えるようになる。


マルチコプターの市場規模と今後の普及の見通し

 

@産業用サービスロボットの市場規模は2035年に10兆円規模に

 製造業の現場ではすでに活躍しているロボットであるが、センサーやプログラムにより自律的に作業を行う機械としてサービス用ロボット市場が今後急速に拡大する見込みである。

マルチコプター市場規模

   2012年ロボット産業の市場動向調査結果概要 平成22年度ロボット産業将来市場調査(経済産業省、NEDO)

 

Aマルチコプター(小型電動ヘリコプター)の用途拡大の見通し

 非常に構造が簡略化されたマルチロータータイプの電動ヘリコプターの登場と、コンピュータ制御技術の発達による自律制御の仕組みが確立したことで、2015年以降産業用途での普及が急速に拡大する見込となっている。

マルチコプター市場拡大の見通し

 

           日経エレクトロニクス 2014年3月3日号記事 参考

 

マルチコプターシステム( UAS : Unmanned Aircraft System  )概要

 

    今までの小型無人航空機は、人間が目で航空機の姿勢を判断できる範囲において、コントロール装置からリアルタイムに制御信号を発信し、操縦を行うといういわゆるラジオコントロールシステムが主流であった。ガソリンエンジンの無人ヘリコプターによる農薬散布飛行や、空撮などはほとんどがこの形式で行われている。当然、人間の目視で姿勢が判断できる範囲に作業範囲の限界が制限されることとなる。また、操縦技術の習得には相当な時間のトレーニングが必要であり、オペレータの育成が困難であるという課題も抱えていた。

   今後普及が期待されている無人航空機は、自律飛行により、人間の目視による姿勢確認が行えない範囲まで、その作業範囲は拡大される。現在、離陸ボタンを押せば、予め設定しておいた飛行経路に沿って、自動で飛行し、目的地、または、離陸したポイントに自動で戻ってくることが技術的には可能となるまでに、テクノロジーは発展している。

  操縦技術自体は進化して誰にでも手軽に操作ができるようになったものの、機械である以上、時として意図しない動きなど想定外の事態は避けられない。従って、有人航空機がほぼオートパイロットによる飛行が可能であるにも関わらず、常時2名のパイロットが運行状況を監視するのと同様に、無人航空機も人間が飛行状態をモニターし、異常時には自律制御を停止して、コントロール可能な体制をとるべきである。 

  このような状態を実現するために、無人航空機システムは以下のような機能が基本となる。

@自律制御を行うフライトコントロールシステム

 ジャイロセンサー 気圧センサー GPSアンテナを装備した小型、軽量なフライトコントローラが一般的に使用されている。センサー情報から機体の高度、速度、姿勢を自動判別し、常に安定姿勢に復元するための制御を自動で行っている。

A遠隔から監視を行うテレメトリーシステム

 予定した経路通りに無人航空機が飛行しているのか? バッテリー残量は十分か? 速度、高度は問題ないか? といった情報をリアルタイムにグランドステーション(オペレータ)に送信するための通信システムが必要となる。FPV(無人機に搭載したカメラからの映像)を用いるのが主流となりつつあるが、画像などの大容量データをリアルタイムに転送するためには、それなりの出力が必要であり、電波法に違反しないような機材を使用することが必須となる。(無線免許をもつ人が、無線局開局申請を行って運用する場合はこの限りではない。)

マルチコプターシステム概要


自動航行システムとテレメトリー(遠隔監視)システムの仕組み

 

   フライトコントローラーに搭載された複数のセンサーのデータを瞬時に処理し、各モーターの回転数を制御することで、機体の姿勢を制御し、自律飛行が実現する。

 また、機体の各種センサー類のデータや、機体搭載カメラの画像を通信によりリアルタイムにグランドステーションに送信し、遠隔地から機体の現状況をモニターすることが可能となる。

テレメトリーシステム

自動航行フライトプランの作成と遠隔監視ツールの画面イメージ

 

  下記のようなフライトプラン作成と、飛行中の監視ができるインターフェイスが用意されている。

missionplanner

無人航空機システム( UAS : Unmanned Aircraft System  )と法律

 

    無人航空機システムを運用するにあたり、事業者として遵守しなけらばならない関係する法律として、航空法と電波法がある。

@航空法と無人航空機

 マルチコプターを代表とする、電動小型無人航空機は、日本国内において、航空法の明確な位置付けが行われていないのが現状である。一方米国においては、航空法の中で、マルチコプターは航空機と位置付けられており、事業用途で飛行させることは現段階で明確に禁止されている。※一部映画撮影目的の飛行に関して最近許可された。

 日本国内においては、マルチコプターは模型航空機としての位置付けが最も近いポジションであり、厳密な規制は行われていない。しかしながら、何をしても処罰されることはないというわけではなく、

航空機の飛行に影響する行為 は処分の対象となる。

 具体的に” 航空機の飛行に影響する行為 ”とはどういう意味か?。それは、航空機に接触、運航を妨害しない空域で飛行させなければならないと解釈できる。高度による空域の分離、航空機が高度を下げて飛行する空港周辺エリアを飛行禁止とすることで、航空機との接触、妨害を防ぐようルールが定められている。

1.空港周辺の飛行禁止エリアは飛行させてはならない。

 飛行禁止エリアは空港ごとに異なるため、事前に飛行させようとするエリアが、飛行禁止エリアかどうか調べておく必要がある。一般的には、空港周辺では飛行させないのが無難である。

2.航路内では高度150m航路外であっても航路250m以上の高度を飛行させてはならない。

 空港周辺ではないエリアであっても、航空機の航路なのかそうでないのかにより、飛行させて良い制限高度がことなる。事前に飛行エリアが航路内か航路外かを調べておく必要がある。分からないときは、高度150m以下を飛行させることが無難である。

A電波法と無人航空機

 遠隔から制御、監視を行うために無線通信を多用する無人航空機システムは、電波を使用するため、当然使用する通信機器には電波法の規制を受けることとなる。免許を要しない無線局として総務省の認可が下りている機器を使用する分には特に問題となることはないが、長距離で大容量の映像データのリアルタイム伝送を行うような場合、一定の出力を超えるようであれば、無線局として申請し、免許を有する者が運用していないと、違法となるので注意が必要である。

  免許を要しない無線局概要

免許を要しない無線局

  免許または登録を要する無線局概要

免許または登録を要する無線局

無人航空機システム( UAS : Unmanned Aircraft System  )の将来と各国の最新事情

 

 先にも述べたように、米国と日本においてはマルチコプターの航空法上の認識が全く異なっている。米国においてはドローンは航空機として、位置付けられ、飛行を行うには、操縦ライセンスと、航空無線のライセンスが必要となる。一方、日本では、ドローンは模型航空機としての認識が強く、操縦にあたっては特に必要なライセンスなどは未整備なのが現状である。米国では、2018年にドローンも航空管制下に置かれ、有人の航空機と全く変わらない状況になる方向と言われており、おそらく、日本もこの方向で法整備が行われるという見方が有力となっている。産業用の無人航空機のオペレータは有人航空のパイロット同様、ライセンスが必要となる世界が近い将来日本でもやってくるものと思われる。

 

[ 各国の最新事情 2014年12月時点 ]

●オーストラリア

オーストラリア政府(CASA: Civil Aviation Safety Authority)は2002年に世界で最初にUAVの規制制度を作った。2014年10月現在で150企業・組織に運用を認可済。特に2014年になりその増加が著しく年間50%の伸び。

規制(2002年CASR part101)の概要:

(1)飛行を楽しむだけの場合には機体及び運用者の認可は不要
 ただし、安全に関する飛行ルール(一般常識程度)を守ること。

(2)業務として使う場合には運用者は認可が必要。操縦者にも認可が必要。
 ・150kg以下の機体の場合は機体の認可不要。150kg以上は耐空証明が必要。
 ・現在この規定を見直して101を102に変更し2016年までに完成させる予定。102では可視外での飛行も視野に入れている。
 ・2013年のCASA発表では2kg以下、2-7kg、7-20kg、20kg以上 名護の重量規制も盛り込む案が出されている。


●米国

2014年10月21日時点で、限定的なUAVの業務運用に対する耐空証明の適用除外を定めた2012年の FAA Reauthorization Act Section 333 の適用を受けた組織は7。申請申し込みは78と急増中である。

一方UAV機体に対しては、2014年1月からは全米6か所の政府が委託した試験場においてexperimental耐空証明(自動車で例えれば仮ナンバープレートのようなもの。航空機の研究開発など他人の用に供さない限定的使用を認める航空法上の制度)を発行しているが、既に29のUASモデルと79の航空機に対しDAR(政府の航空機の耐空証明認証官)が当該耐空証明を発行している。
(2014年10月の米国ヘリコプター協会主催のシンポジウムにおけるFAA Small Airplane Directorate の発表による)

米国政府は本年末までには本格的な規制 -the Small UAS rule- を制定すると発表している。
試験場が設定された2013年12月末までは個別にDERが、experimental耐空証明を発行してきたが、その数は545であった。ある試験場の責任者からは、この規制に対しては極めて多くの、多分一万を超える一般からのコメントが寄せられるとの情報もあり、最終的に定まるのは早くて2017年、可能性としては2018年との見方がある。

試験場は次の通り。
アラスカ大学、ネバダ州政府、ニューヨーク・グリフィス国際空港、ノースダコタ
商務省、テキサスA&M大学、バージニア工科大学。

前記の2012 reauthorization Act ではSmall UASの定義として重量4.4ポンド以下とし、可視範囲の400フィート以下の高度で、空港や航空機利用場所から5マイル離れた場所で昼間での使用とされているが、その後の検討で重量は25ポンドに引き上げられている。
なお2012に FAAは専門部署 the Unmanned Aircraft Systems Integration Officeを設立した。


●英国

欧州政府の中では英国政府の航空局(CAA)が最も先行しており、2010年にはUAVの商業利用に対しては認可を受けなければならないとしたが、2014年10月現在における認可取得組織の数は359であり、2014年年初から10月までの期間において80%の割合で急増している。
なお現在は重量20kgを超えるUAVの使用、1000人以上の人の集まるエリア、ビルや構造物から50m以内の飛行は原則として禁止。
(2014年10月の政府公聴会など)


●EU
2013年6月に発表されたEuropean RPAS Steering Groupからの最終報告書によれば
2018年の航空法との統合規制に向けたロードマップが以下の様に示されている。