最も無人ヘリコプターの実績が多い分野である農業の農薬散布に活用する例では、従来、飛行重量約70kgの大型ガソリンエンジン機が用いられてきた。日本国内においても約2500機ほどの累計出荷台数があり、効率的に農薬散布を行う方法としては定着している。しかしながら、1機当たりのコストは1000〜1500万円と、非常に高額な設備投資となる上、機体操縦技術の難易度も高く、気軽に導入できる機械設備ではない。マルチコプターの登場により、農薬散布においても、コストメリットや安全性において、農業関係者からの期待は大きい。以下、従来型のガソリンエンジン機と電動マルチローター機の農薬散布飛行における比較を示す。
ガソリンエンジン機 | 電動マルチローター機 | |
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外観 | ||
サイズ | 全長約3.5m ローター径約3m | 約1m |
重量 | 70〜100kg (燃料、農薬積載時飛行重量) | 約10kg (バッテリー、農薬積載時飛行重量) |
コスト | 1000〜1500万円 | 200〜300万円 |
農薬積載量 | 約25L | 約7L |
その他 | ・基本オペレータによる手動操縦 ・建物や人に衝突した場合、甚大な被害が出る ・狭い場所には向かない ・一回当たりの飛行時間は1時間と長い時間連続作業が可能※燃料満タン時 ・機械的に複雑なため、メンテナンスや調整が難しい。 |
・基本GPSによる自動航行※高度制御には若干オペレーション必要 ・衝突した際のダメージは少ない ・狭い場所でも対応可能 ・一回当たりの飛行時間は15〜25分※フル充電バッテリー搭載時 ・メカがシンプルなのでメンテナンスが容易 ・静粛性がガソリンエンジン機に比べて非常に高い |